階層と行動の円環(Lingua Franca 2.1)in「THE CAMPUS HALL CORE」

品川駅港南口から徒歩3分の本オフィスはコロナ禍を機にオフィスエリアの一部をパブリックスペースとして開放したことで、街との隔たりが少しずつ緩まり続けている。駅の周辺も疫病が流行する以前へと少しずつ逆戻りしているようであるが、人の数も他人との距離も、それ以前と比べると明らかに変数があるように感じとれる。そのような社会状況下で、展示会などのイベントやライブ、ヴィジュアルプレゼンテーション、社員のワークラウンジなどの多様な機能を担保することができるオープンコミュニケーションホールをオープンすることとなり、私たちは壁装材としての円環幕の計画を行った。
築40年のオフィス内で定期的に修繕され続けていた赤色ベロアの壁装材を刷新する、または消しゴムでキャンセルしてしまうかのように白布を壁面側、オーガンジーを場の中心側へ向けた2層の積層構造の幕とし、吸音性能も付与した。このとき、オーガンジーについては、2021年のリニューアル時に館内に配置した100mに渡った帯状の無彩色グラデーションを輪状に繋ぎ直すことで始点終点を消失させ、360度全方向型ホールの始まり、終わりをなくすこととした。また、このホールはエントランスエリアと繋がっていて、同じく2021年時に半円状に配置した都市との距離を生む積層布とをシークエンスで捉えると二重円環の配置となっており、都市スケールでのグラデーションも与えている。
コロナ元年より疫病と並走し続け、周辺環境や人々の行動状況が劇的に変化していった本projectは、オフィスの在り方を考える良い機会になったのと同時に、個がどのような距離感で社会と接続するのかを模索する終わりのないテーマに向き合えたように思っている。

所在地:東京都港区

担当:山本紀代彦・森永一有・西垣佑哉・泉百合菜・松島優実

施工・現場管理:杉本隆治・四宮慎太郎(マナトレーディング株式会社)

建築/内装の設計:原田怜・川尻健介(コクヨ株式会社)、轟木徳八(HACHIDO)

写真:河田弘樹

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