のりしろと軸線 in 北沢のリノベーション

東京都世田谷区にある住戸改修に対しての計画。
空間を1:2に分節する耐力壁が特徴的な住戸で、この住戸の設計者でもある住まい手は、分節された2つのそれらをA面B面と位置づけ、機能や環境をA面に仕分けし、B面では余白を残し続けながら生活しようと考えていた。角部屋に位置するこの住戸は大きなバルコニーがL型に配置されており、余白のさらに外側に「のりしろ」があるような環境になっている。
この「のりしろ」をC面とし、余白のさらに外側をレイヤー状に意識化させようと考えた。X軸になる南北面にはベッドやデスクが置かれるため遮蔽性を高める黒い軸線を引き、Y軸になる東面はできるだけの自然光を引き込むために灰色の軸線を引いて、それらが部分的に交錯する、ほどけたようなグリッドを付与した。それぞれの軸線が各室を越境することで縄張りを意識づけ、都市からの連続性を生んだことにより、縮んだり膨らんだりする都市との距離感。その縄張りを越えた先にはバルコニーや共用廊下があり、C面は自分たちの専有物であるような、あくまでも共有部であるような、都市の一部であるようなかが、よくわからない感覚に陥る。また、A面B面内で分室化するために設けた布については、将来的には仕切る必要がなくなったり、さらに細分化したりする可能性もあるため、偏光発色をするカーテンとし、余白とのりしろのあり方を適時的に支える衝立のような役割とした。都市との距離感や住戸内での密接感をコントロールできるアプリのようなツールとして、カーテンを介するか否かを日々選択しながら生活してくれると嬉しく思う。

所在地:東京都世田谷区

担当:山本紀代彦

住戸の設計:萬玉直子+鎌谷潤 / b-side studio

写真:河田弘樹

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