暗室は輝いている

住戸の南側では特に造成されていない自然林が広がっており、内部はその環境を引き込むかのように、仕切り壁のない奔放なワンルーム空間になっていて、東面からの強い朝日に備える、就寝するために整える、局所的な暗室計画である。
光を遮るための素材として、片面がアルミニウムの断熱材を用意し、室内の長手側に配置されている壁面収納の3種類の幅のラワンの寸法と同期するように、断熱材を短冊状に処理し、それを鳥が巣作りするような作法で密度を高めていく。
高密度の短冊が結集すれば巣の内側は暗室になり、朝目覚めてカーテンのように開け放つと、細切れの鏡面たちは自然林を倍音のように増長させる。
一見、環境に倣ってのプリティブな設え、設え方のようにも見えるが、断熱材に取り囲まれて就寝するするという行為自体は、現代においては至極あたり前の所作であると思っている。

所在地:奈良県奈良市

担当:山本紀代彦・森永一有・西垣佑哉・松島優実・村瀬唯

住戸の設計:ひとともり

写真:河田弘樹

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