慣習とカーテン in 香林居

石川県金沢市にある、かつては工芸品を扱うギャラリーであったビルをホテルへ改装する計画。
北側の客室は、アーチ型を集積したような既存ファサードに対して、室外側の布に遮光性能を付与し、サイズをフルハイトにすることで窓へ帰属させた。
また、室内側の透過度の高い布は天井から落とし、奥行き方向も窓から距離を取ることで、こちら側は窓の帰属から解放した。
元来の日本家屋のように、雨戸を閉め、障子を閉めて就寝するという、私たちが近年馴染みが薄くなっているかつての慣習に倣って、外界との距離を取る行為を参照した。
室内側の布が天井から離れたことで、アーチ型の上部にハイサイドライトが生まれ、室を分節する仕切り布としても機能するようになり、朝日を浴びて起床する、簾を介して人と距離を取るといった、当たり前のような体験を改めて触れることができる。
浴室スペースのオーバーレイのシャワーカーテンも布とビニールの下部にギャップを作ってロウサイドライトを生み出し、北側の客室の色は白一色で統一している。
南側の客室も北側と同じような方法を取り、色はグレー〜黒の階調としている。
また、ペリメーターゾーンから切り離される、室内のシーンを切り替える布は、シルバーやゴールドの金属色とし、自然光や照明を引き受けるリフレクターとした。
新たな業態をインストールされた都市のビルに宿泊し、古くからの慣習に改めて触れることで、人々が日々の生活を見つめ直すきっかけになってくれればと思っている。

所在地:石川県金沢市

担当:山本紀代彦・森永一有・村瀬唯・西垣佑哉

建築の設計:ひとともり

企画・運営・プロデュース:L&Gグローバルビジネス

写真:河田弘樹

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